高性能賃貸住宅が広まらない、本当の理由
では、なぜ「高性能賃貸住宅」はこれまで広まらなかったのでしょうか。
注文住宅の世界では、「高断熱・高気密・省エネ設計」といった性能を重視する家づくりが浸透してきました。
省エネ性能や室内環境への意識も年々高まり、住まいに対する価値観そのものが変化していることを、日々の設計や現場を通じて実感しています。 (実務レベルではまだ大きな差があるとも感じていますが……)

一方で、賃貸住宅はどうでしょう。
賃貸経営の主流は今も「いかに安く建てて、利回りよく運用するか」です。
高性能仕様にすれば建築コストは上がり、結果として家賃も高くなる。
収支を試算すれば「割に合わない」と判断されやすく、銀行融資でも高性能にしたからといって、評価されません。
これが、高性能賃貸が普及しない最大の理由のひとつです。

気持ちはあっても、事業として成り立たせることの難しさが立ちはだかる。それが現実です。
ただ、少し視点を変えてみると、見え方が変わってきます。
賃貸住宅の退去理由として大きな割合を占めるのが、騒音や結露など「快適に暮らせないこと」への不満です。
逆に言えば、退去したくないと思われる物件をつくることができれば、空室リスクが下がり、長期的には安定した経営につながる。
- 利益だけを目的にするのではなく、入居者に本当に喜んでもらえる建物を残したい
- 利回りだけでなく、将来にわたって安定した賃貸経営を行い、次の世代へ引き継いでいきたい
――そんなオーナーにとって、高性能賃貸はむしろ理にかなった選択になり得ると思うのです。
耐久性や性能を重視した賃貸住宅は、一つの有効な選択肢になるはずです。
次の話では、そんな想いを胸に、私がこのプロジェクトを始めた理由と、その目的についてお話しします。